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文武両道を追求して 元経産省官僚 三本松 進 先輩

1974年卒

今どういったお仕事をされていますか

現在の仕事は、日本の宇宙・人工衛星開発で、日本の人工衛星の小型化とグローバルな宇宙利用拡大支援を行っています。また、この関係で米、英、独、露、シ ンガポール、ベトナム、ペルーと海外出張しました。特に、日本は、ベトナムの宇宙センター建設と人工衛星開発、宇宙人材育成を内容とするODAプロジェク トを立ち上げましたが、我々はこの衛星開発部分を支援しています。私は、地球を宇宙から見ると地上に国境はなく、また、人工衛星の機能は戦後の人類の最大 の発明の一つで、人工的な神様の目であると考えています。この技術、成果、データは人類の共有財産であると考え、世界にその力、効果を均霑させる必要があ ると考えています。

そのお仕事に、東大柔道部時代の経験がどう生きていますか

東大柔道部では様々な苦しい経験を味わいましたが、それのおかげでいろいろと成長することができました。
当時の東大柔道部は寝技中心の部活動でした。私はどちらかというと立技が得意だったのですが寝技による引き分け戦術に苦しみました。そのため、大学1年後半から帯取り返しという「捨て身技」に取組みました。  
この技は、相手が自護体の時にこちらが瞬時に寝技に移行できる技で、この技をマスタ―するためには、まず、自身の身を捨てる勇気が必要でした。また、東大 紛争により入試が1年間中止され、延べ3年間1学年上がいなかったため、大学2年秋から柔道部主将となり、2年間主将を務めました。そして、大学3年生の 時の七大戦では、一人で6人の相手と連続して試合をしました。しかし、結局勝負がつかず、抽選で負けるといった非常に悔しい経験も味わいました。悔しさを バネに新しい技を開発し皆を強化した結果、4年生の七大戦では優勝することができました。
この結果、自分の仕事において、①私心を超える、②負けて臥薪嘗胆している時間に耐える、③事前準備を行い、無心に会議等に臨む、④トップが全体構想を示し、部下を引っ張って行くことを実践できるようになりました。

高校時代は、どういうことをやっておけばいいですか

私の経験は一般化が難しいですが、文武両道の追求ではないでしょうか?
出身は広島市で、その私立男子一貫校で受験校でもあった修道中学、高校で勉強と柔道の両方を追求していました。練習時間は意外に少なく毎日1時間30分 で、毎夜3時間程度勉強していました。中学時代から背が高く、筋力があったので、広島県の重量級で、中学で優勝、高校で広島県代表に選ばれ高校3年夏のイ ンターハイ個人戦出場、秋の国体出場と戦歴を上げました。受験生の方々も、可能な限り、文武両道を追求してください。
…私は勉強に縁があるのか、大学受験浪人、公務員試験浪人を1年ずつ経験して、厭というほど勉強する時間を持ちました(笑)。

高校生におすすめの本等はありますか

高校時代は、あまり本を読む時間が取れないと思いますが、柔道では嘉納治五郎伝を読むことをお勧めします。
嘉納師範は、東大文学部出身で、日本のオリンピック委員会の代表も経験されています。
むしろ、これから人生の苦しい時期に読む本としては、鈴木大拙の「禅と日本文化」(岩波新書)をお勧めします。この中の「武士と禅」、「剣と禅」、等の記 述に感動しました。北条時宗の元寇撃破など、歴史上の偉人の快挙達成前の内面葛藤と彼らの心の鍛錬の仕方が理解出来、私の人生における心の灯となっていま す。
また、最近読んだ本で、内村鑑三の「後世への最大遺物」(岩波文庫)もお勧めです。「普通の人間が後世に残すことが出来る最大の遺物」は何か、お金・慈善 的寄付、事業、思想、等ではなく、「逆境、制約条件をものともせず、本人の信ずる道、追求する価値、仕事で勇ましい意義のある生涯を送ること」と述べてい ます。

その他、高校生にメッセージをお願いします

私は、現在、東大柔道部OB会の代表幹事を拝命しているため、柔道部の各種の対外試合、練習状況を観ています。最近の東大柔道部は、我々の頃の寝技偏重か ら変わって、立って攻め寝て攻めの理想の柔道を追求しているように見えます。また、大学時代、真面目に文武両道を追求した諸先輩、若手OBは、ご本人の志 を追求して、国会議員、大企業の社長、弁護士、大学教授、団体役員、等になっています。私の場合は、経済産業省に入り卒業するまでに、エネルギー、通商交 渉、経済協力、国土計画・開発、大学教授(総合政策、イノベーション、サービス・グローバル経営)、外交官(戦時下のイランに駐在)、等の多様な世界を経 験し、そのたびに新たな知識・技術体系を理解し、業務管理して来ています。
 柔道の技には、捨て身技、絞め技、等、攻防の局面である種の自己超越による新技術の獲得プロセスを要求するものがあります。技術と肉体の融合が求められます。
 また、社会は複雑化、グローバル化しており、その社会の仕組み、科学技術の構造、内容を理解しなければ、まともな組織の運営は困難です。私の場合、今でも勉強、研究を行う機会が待っています。
 このように東大柔道部で文武両道に励むこと、即ち、柔道部で柔道を通じての人間力形成と学業を通じての理論形成を行うことは、諸君の人生を実り大きなものにすると確信しています。
 受験生の皆さん、これからの受験期間、高い志をもって、東大受験にターゲット決めて、意味のある勉強を行ってください。駒場、本郷の道場で、新人柔道部員としてお会いできることを期待して待っています。

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